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◆うめさんの家出◆


 「あらぁ〜〜きれいな猫やねぇ〜♪まだ若いから、毛もツヤツヤしてるし・・・」

夫の両親が新居見物に上京。で、さすが猫好き一家、すぐ猫娘へ目がいく。が、当の猫娘は

見知らぬ客に対してはいつもの如く、近づけばフッ!と威嚇、あとは遠ーくで床にペタリと平伏、

延々こちらを凝視し続けちょる・・・(--;)

 

しばし猫娘の事は忘れて喋りまくっていたが、

何かの話の流れの中で、おかーさんがさらっと

言った言葉―「死んだうめが・・・」に、エッ?

となる。うめはももの母で。甘えない猫だった。

 「うめ、死んだんですか?」

 「というより、出て行ったとですね」

 「え?出て行った?」

ニヤリ・・・うめ、人でいえば90歳
猫娘、人でいえば8歳くらい

 「うめは人に懐かん猫じゃったけん。それが

  あの晩、お父さんの膝にポンっとのってきて

  あれーっ、珍しい事もあるね〜て言うてたら

 ・・・それからその晩、出て行きよったとです。

  ‘お別れ’に来たとですね」

なんという不思議さ、悲しい程の潔さか・・・

その後、うめを見た者は誰もいない。

潮風香る夫の故郷。土に帰ったうめの魂は

今も心地よくノドを鳴らしているはずである。

2003.09.30